黒田 公美国立研究開発法人理化学研究所
脳神経科学研究センター
親和性社会行動研究チーム
チームリーダー

座るとグズる赤ちゃんの不思議

そうだったんだ、グズグズ機嫌が悪い赤ちゃん、座ってあやそうとすると余計に泣いてしまって座れなかった。でもそれって、実は私に協力していたんだね。

娘や息子が赤ちゃんの頃、「赤ちゃんって、どうして立って抱っこしてもらいたがるのかな?」と不思議に思っていました。電車やバスで、グズグズと泣いている子どもを抱っこしていて席を譲ってもらったのに、「座ると余計に泣いちゃうんです。」と言って断ったこと。

立ったまま抱っこをし続けて、自分もフラフラ、少しでもいいから座りたい、と思うのに、自分が座った途端に赤ちゃんが激しく泣いてしまう。ゆらゆら揺れながら、立って抱っこをしていると大人しくなる赤ちゃん。「でも… 私だって限界、ちょっとは座らせて!!」皆さんは、そんな気持ちになった経験はありませんか。

実は、赤ちゃんが立って抱っこをしてもらえると大人しくなる、安心して寝てしまう、それには理由があったのです。

それは、赤ちゃんに生まれながらに備わっている「輸送反応」という仕組みでした。

この仕組みを解明したのは、理化学研究所の黒田公美先生をはじめとした共同研究グループ。

「輸送反応」赤ちゃんと親を結びつける「愛着行動」の一つ

人間の赤ちゃんは、立ったり、ゆらゆらと歩きながら抱っこしてもらうと安心して眠りやすくなる、これは他の哺乳類にもそうした現象が見られるのだそうです。

こうした哺乳類の子どもが親に運ばれる際にリラックスする反応を、「輸送反応」といいます。黒田先生のチームは、生後6ヶ月以内の赤ちゃんの協力を得て、調査をしました。すると、お母さんが赤ちゃんを抱っこして歩いて移動する時と、お母さんが赤ちゃんを座ったままで抱っこする時とでは、はっきりとした変化があったのです。

赤ちゃんは、お母さんが歩いて移動している時によりリラックスしていることがわかりました。(理化学研究所 抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組みの一端を解明(http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130419_2/ )

その理由は、赤ちゃんもまた、親が移動をする時に大人しくなることで、親が移動しやすくなるように「親に協力をしていると考えられる」というものでした。

哺乳類の動物は、危険がある時には急いで逃げなくてはなりません。私たち人間もそうです。とっさの逃げる時に、一緒に移動しなければならない赤ちゃんが泣いていたり、
激しく動いていては逃げることが難しくなります。なので、赤ちゃんは自分が大人しくなることで、親が逃げること=移動することに協力をしている。

「輸送反応」とは、赤ちゃんと親を結びつける「愛着行動」の一つである、ということが証明されました。

立って抱っこされている方が赤ちゃんはリラックスする

「どうして、立ってないと泣き止んでくれないかなぁ…。疲れた、座りたい、私が泣きたいよ。」赤ちゃんに対して、ついイライラ、悲しい気持ちになっていました。けれど、そうだったのですね。

立って抱っこしてもらう方が赤ちゃんはリラックスする。赤ちゃんに備わっている、親に協力する仕組み=親と赤ちゃんを結びつける愛着行動だったのですね。

「輸送反応」を知って、私の思い出は、イライラ、悲しい気持ちになった体験ではなく、赤ちゃんだった子どもたちが、私と「愛着」=親子の結びつきを作ろう、としていてくれた行動だったのだ、と、
温かい思い出へと変化していきました。

もっともっと、早く「輸送反応」のことを知りたかったな。

※黒田公美先生には、こうとう子育てメッセ2017にてご講演いただきました。

 

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